国連世界高校生会議

1992年に、国連国際学校より、"第17回国連世界高校生会議"への招待状が山手に届きました。国連の本会議場で、世界から集まった20数ヶ国、400名以上の高校生が、その年のテーマについて英語でディベートします。1993年以後、毎年数名の代表を派遣しています。およそ学年末の3月に開催されます。
UNIS-UN2018に参加して
上村 理緒
高校1年生の頃から夢見たUNIS-UNについて、今、自分が実際に体験したこととしてレポートを書いていることがいまだに信じられません。私は小学1年生から中学3年生までマレーシアの日本人学校に通っていたこともあり、世界の様々な人と関わることに興味があったので、私にとってUNIS-UNに参加することは山手学院に在籍するに当たっての大きな目標の一つであったからです。憧れのUNIS-UN参加の夢がかなった後、私は早速今回の会議のテーマであった「Technology, Innovation, and the Future of Work」に関連するAI、イノベーション、機械化や自動化による将来の影響について勉強を始めました。
ニューヨークへの出発まで計6回の勉強会で、先生と先輩方とともに、自分たちの意見をまとめ学習を深め合い、準備をしました。最近の企業の宣伝文句でAIや人工知能と言う文字をよく見かけます。しかし、私たちの社会をより便利にすることを期待されていたAIは、人間の仕事を奪い、近い将来人間の知能を人工知能が上回り、人間を支配する、などの懸念もあります。引率の中澤先生が「AIやスマホなどの最新技術って、本当に人間にとって必要なの?社会を便利に、効率的にするために生み出された最新技術によって、かえって忙しくなっているではないか。」とおっしゃっていたことがとても印象に残っています。
出発当日は、クラスの友達がくれたお菓子をかばんに、応援してくれた言葉を胸に、わくわくしながら飛行機に乗りました。ニューヨークの街に出ると、当たり前ですが周りが早口の英語ばかりです。これから1週間大丈夫だろうか、と到着早々心配になっていました。1週間の滞在はホームステイでした。ホストしてくれたCelineと街で買い物したり、タイムズスクエアを歩いたりできて本当に楽しかったし、国ごとに文化も生活習慣も大きく異なるということを、身をもって感じられてよかったです。彼女の行動で驚いたことがあります。一つ目は、スターバックスでカップの中の水を一口しか飲んでいないのにゴミ箱にそのまま捨てたことです。一口しか飲まないことにも、カップを水が入ったまま捨ててしまうことにも驚きました。二つ目は、Targetというショッピングセンターで、レジで大量にもらったビニール袋をまだまだ使えるのにゴミ箱に捨てたことです。家に持って帰ればゴミ袋になるだろうに、もったいない、と私は思いました。これら二つのことは、私に「アメリカ=大量生産・大量消費・大量廃棄」というフレーズを思い起こさせました。
会議は二日間に分かれて行われました。6人のゲストスピーカーがスピーチをし、その後生徒との間で質疑応答が行われました。大体のゲストスピーカーは、喋るのがとても速く、私は耳が慣れていないので大変でした。質疑応答は、挙手をして当てられたら話せる、という形でした。私は一度も手を上げることができませんでした。要因は二つあります。一つ目は、英語に自信がなかったからです。ゲストスピーカーの言っていたことを100%理解できてはいなかったので、そもそも質問を時間内に考えつくのが難しかったです。二つ目は、勇気が足りなかったからです。場違いな質問をしてしまったらどうしよう、仮に質問できたとして、ゲストスピーカーに聞き返されたらどうしよう、その聞き返された内容が理解できなかったらどうしよう、それこそ公開処刑だ…と、どんどんネガティブ思考になっていってしまいました。私は自分のチキンさに憤りを感じるとともに、9年間海外に住んでおきながら特に英語の勉強をしてこなかったことを悔やみました。
そんな私が今回の会議で心に残っていることは、世界中の生徒たちの積極性と、英語に対する姿勢です。彼らはどんどん自分の意見を主張するし、英語のアクセントや訛りを気にせず発言します。文法が完璧ではないにしても、英語をコミュニケーションツールと捉えているからどんどん使えるのだと思いました。会議の合間や終了後に、他の国から来た高校生と話してみました。中には英語圏出身ではない子も沢山いましたが、彼らは幼い頃から学校で英語での授業を受けてきたそうです。また、ドイツやベルギーなどのヨーロッパ出身の友達もできましたが、彼らは文法が比較的英語に近いので、英語は簡単だと言っていました。彼らはそこにプラスアルファでフランス語やスペイン語を学ぶそうなので、驚きました。中には五ヶ国語も喋れる人もいて感心しました。日本では英語がなくても生きていけるので、学校のカリキュラムにおいても英語の出来は6割くらいまでしか求められていないように思います。それなのに日本人は完璧な英語にこだわって、話すのを恥ずかしがります。英語は世界の大半の人が話します。お互いに母国語が英語じゃない人同士が繋がりあえる時代です。それって素敵なことだと思いませんか。そんな時代で英語が使えないのはもったいないと私は思います。日本人は英語に距離を感じていると思ったのと同時に、もっと身近なものとして認識すべきだと思いました。
1日目の会議終了後に、国連の職員であるCelineのお母さんが国連の中を案内してくれました。本来ならスタッフしか入れないところに入らせていただき、実際に国連議員たちが会議をしている現場まで見ることができました。観光で国連ツアーに参加しても経験できない、素晴らしいツアーでした。国連には世界中の国旗があり、平和を象徴するものが沢山置いてありました。地雷の破片や、原子爆弾の写真や遺物がありました。他にも世界の国々の有名なものが飾ってありました。一番印象に残っているのは、きれいで大きなペルシャじゅうたんです。思う存分国連の中を堪能することができて幸せでした。自分に1つ、国連のマークのバッジを買いました。今も制服のリボンにつけています。
2日目の会議終了後は、UNISで日本語クラスの授業を取っている生徒さんと、今回UNIS-UNに参加した日本の高校の生徒とのディベートがありました。ディベートのお題は「イノベーションを続けると、持続可能な社会に到達するか」でした。UNISの日本語クラスでは、英語のほうが得意な子が多かったのに、日本語でもどんどん発言していて積極的でした。たまに英語が混じって、話し合いが白熱するのが面白かったです。
とても濃密な1週間はあっという間に過ぎてしまいました。NYでの1日は、日本で何気なく過ごす日の3日分の意欲とエネルギーとアクティビティーが詰め込まれていたくらい、毎日の内容が濃く、充実していました。今回のUNIS-UNで学んだこと、得たものは沢山あります。勉強期間を含め、この3ヵ月間で本当にたくさんのことを考えました。今回のUNISのお題は「Technology, Innovation and the Future of Work」だったので、自分が大人になる頃には、確実に今の社会と大きく変わっていることが生活面にも仕事面にも出てくるということを意識しました。代表的な例が、AIによる人間の仕事の代替です。現在のお給料がいい仕事の価値も、未来では約束されていない、従来のものとは全く違う勉強が求められている、と言うこともできると思います。今の日本の教育現場では、おもに先生が黒板に書いたことを生徒がノートに書き写す、「創造する」行動が存在しない授業が行われています。受動的な授業です。しかし、もっと人はクリエイティブになるべきです。自分が大人になる数年後には、何が起こっているのかわかりません。私たちはこれまでに経験したことのないような世界に突入していると思います。今回のUNIS-UNは、これから受験を控える私に広い視野を持つことの重要性を教えてくれました。これまで述べてきたことも、この会議に参加し、勉強を深めなかったら考えていなかったと思います。英語の学習への意欲はもちろん、このような考え方、そして他国の積極的ですてきな友達を作る機会を、UNIS-UNは私に与えてくれました。