学校長あいさつ
今「教育」は何をなすべきなのか

時乗 洋昭
生徒・受験生諸君へ
2050年、諸君が社会の中核として活躍している時期である。そのとき、きみは何をしているのであろうか。30年先の自身の様子を、少し想像してほしい。
人工知能(AI)の研究者であるレイ・カーツワイル博士は、遅くとも2045年までには人間とAIの能力が逆転するSingularity(技術特異点)に到達するであろうと予測している。一方で、国立情報学研究所の新井紀子教授(『AI vs.教科書が読めない子どもたち』の著者)は、Singularityは来ないであろうと言っている。どちらが正しいのか、時期が来れば明らかになるが、ひょっとするとどちらも間違っているかもしれない。
しかし、いずれにしても、第4次産業革命などと言われているように、現在AIに代表されるデジタル革命は急速に世界に広まり、我々の生活に浸透している。デジタル革命の他にも、急速に進行している超高齢化と少子化、そしてグローバル化など、我々のこれまでの経験値や成功体験では処理できないような状況が進行しており、この状況への対応策の「正解」を誰も知らない。そもそも「正解」などありはしない。
そのような誰も予測のつかない社会を、諸君は切り開いていかなければならない。「世界をどうしたいのか」と問われれば、何と答えるだろうか。この問いへの答えが、諸君の30年後を決める。
山手学院での学びを通してこの問いへの答えを見つけ、リーダーとして、将来、世界のどこかで大きく羽ばたいていってほしい。
保護者の皆様へ
30年後をお子様が逞しく生き抜いていくためには、教育(学校)の在り方も大きく変わらなければなりません。
当然、高校卒業後の進路実現が大切なことは言うに及びません。しかし、それだけでは不十分です。大学入試も大きく変わろうとしている中で、従来のように「正解」を求めるテクニックやGoogleで検索すればすぐにわかるような知識だけを身につけさせるような教育は、もはや通用しなくなっています。今、どこに目線を置いて教育活動を行っているのか(数年先なのか30年先なのか)が、学校に問われています。
山手学院では、他に先駆けて海外に生徒を派遣するなど、常に30年先に目線を置いた教育を展開して参りました。これからも、第4次産業革命の先に来る時代を見据えながら、AIやICT技術を教育に積極的に取り入れることで、生徒一人一人に最適な教育環境(個別最適化された教育環境)を提供し、プロジェクト学習などによる探究活動を通して「正解」のない課題に挑む能力、失敗を恐れないチャレンジ力を育て、生徒の持つ可能性を大きく広げて参ります。